絵とかなんとか色々置いておく場所です。
刃を振るえば、人ならざるモノの血飛沫があがる。
目の前が、紫に染まる。
敵の本陣までは、遠い。
紫色の血糊を浴びて尚も異形を斬り伏せる。
獣じみた声があちらこちらから上がる。
その声すらも切り裂いて。
ただただ刃を振るう。
目指すは本陣の、黒い影一つ。
あの戦から、早二十年。今も、離れない光景。
「入ってこい、遠慮など要らぬ」
視界には、半開きの障子。外は、しとしとと雨が降っている。
障子に映るは、映るはずのない人影。
「丁度退屈していたところじゃて、一局相手を願えるかのう」
先ほど仕舞い込んだ将棋盤と駒をいれた木箱を取り出す。
「のう、烈将殿?」
将棋盤の先には、やれやれと言わんばかりの顔をした、烈将と呼ばれる男。
「主上が相手では足りぬのですか」
「いつも同じ相手では、打っておるうちに癖が見え、先が読めてしまう」
相手に木箱を渡してやる。
「そうやって知った癖を踏まえ、先を読みあうも一興だがな」
双方の陣が組み上がる。
「時には、新たな刺激が欲しくなる。……ですか」
「そのように改まらずとも良い。先手は譲ろうかの」
ぱち。
ぱちり。
駒が行き交う。
相手の手は、歩兵を囮にして飛脚や王自らが駒を取っていく反面、こちらの攻撃は紙一重でかわして行く。駒を取ろうと思っても、こちらの駒の動ける場所の内にはない。
忍びらしいが、どこか無鉄砲とも言え、また計算しつくされた展開。
「のう、烈将」
「はい」
ぱちり。
「将とは、どんな存在であると思う?」
ぱちり。
ぱちり。
駒を打つ音しか、聞こえなくなる。
「俺は、切り開く者であると思います」
ぽつりと、相手の声が紡がれる。
盤上では、相手の主要駒であったはずのものが、陣まで戻っていく。
「陣の奥でふんぞり返るのではなく、他の者を楯にするのではなく」
ぱちり。
「安全に、確実に味方が敵陣まで進めるように戦陣を切り開き。
敵将までの囲いを壊す」
ぱちり。
「そういう存在であると思います」
進みくる相手の王将の影にいた歩兵が、こちらの王将を追い詰めている。
「甘い、考えでしょうか」
盤の先に、にぃと笑う相手がいる。
「……いや」
苦笑を一つ。
「儂も、そう思っておるよ」
ただただ人ならざるモノを斬り伏せた。
傷つくのは自分だけでいい。
戦陣の最前を駆け抜けて、紫に染まる視界を切り裂いて。
ひたすらに目指したのは、敵の本陣。
「良い対局じゃった。また付き合うてくれるかの?
正宗……いや、雅がいない時だけと言うならば、それも構わぬ」
一瞬、相手がびくりと震える。
「時宗もお前さんを気に入っているようじゃて。
今度から家に来るときは、忍ばず正面から堂々と入って来るがよい」
「……俺、そんなに気配消すの下手ですか?」
相手の顔が少し拗ねたように歪むのが可笑しい。
「逆じゃ。お主ほどの気配が、いきなり消えたり現れたりしてみろ。
よほどのうつけ者でなければ誰でも警戒するわ」
苦笑を漏らしながら答えてやる。
相手は実に不満そうで、それが更に可笑しい。
おそらくこれが、雅がこやつを慕う理由なのだろう。
「時に。酒は嗜まれる方かのう?」
不意に問いかけると、きょとんとした顔が向けられる。
「なに、時宗には酒を付き合わせる訳には行かぬでの。
まさかその為に城に上がるわけにもいくまいて」
にっと笑ってみせてやる。
「……俺も、他のヤツらには酒の相手をさせられませぬゆえ」
にぃと悪戯好きそうな笑顔。
「今度来るときには、手土産をお持ちします」
「んむ、楽しみにしておるよ」
雨の日は、思い出す。
あの時の、あやつの笑顔を。
息子がもう一人、出来た。
自ら修羅を行くと決めた頑なな娘の心を開く相手は、
儂の自慢の息子になるはずだった。
もっと将棋を打ちたかった。話したいこともまだまだ山とあった。
奥の間に安置してある一振りの業物を見やる。
「雅」
部屋の奥に声をかける。
「今日の雨は、まるで誰かが泣いているかのようじゃよ」
返ってくる言葉などない。
いつもは側に携えるその業物は、部屋の奥に安置したまま。
天を仰いで、降りしきる雨をただ見つめる。
目の前が、紫に染まる。
敵の本陣までは、遠い。
紫色の血糊を浴びて尚も異形を斬り伏せる。
獣じみた声があちらこちらから上がる。
その声すらも切り裂いて。
ただただ刃を振るう。
目指すは本陣の、黒い影一つ。
あの戦から、早二十年。今も、離れない光景。
「入ってこい、遠慮など要らぬ」
視界には、半開きの障子。外は、しとしとと雨が降っている。
障子に映るは、映るはずのない人影。
「丁度退屈していたところじゃて、一局相手を願えるかのう」
先ほど仕舞い込んだ将棋盤と駒をいれた木箱を取り出す。
「のう、烈将殿?」
将棋盤の先には、やれやれと言わんばかりの顔をした、烈将と呼ばれる男。
「主上が相手では足りぬのですか」
「いつも同じ相手では、打っておるうちに癖が見え、先が読めてしまう」
相手に木箱を渡してやる。
「そうやって知った癖を踏まえ、先を読みあうも一興だがな」
双方の陣が組み上がる。
「時には、新たな刺激が欲しくなる。……ですか」
「そのように改まらずとも良い。先手は譲ろうかの」
ぱち。
ぱちり。
駒が行き交う。
相手の手は、歩兵を囮にして飛脚や王自らが駒を取っていく反面、こちらの攻撃は紙一重でかわして行く。駒を取ろうと思っても、こちらの駒の動ける場所の内にはない。
忍びらしいが、どこか無鉄砲とも言え、また計算しつくされた展開。
「のう、烈将」
「はい」
ぱちり。
「将とは、どんな存在であると思う?」
ぱちり。
ぱちり。
駒を打つ音しか、聞こえなくなる。
「俺は、切り開く者であると思います」
ぽつりと、相手の声が紡がれる。
盤上では、相手の主要駒であったはずのものが、陣まで戻っていく。
「陣の奥でふんぞり返るのではなく、他の者を楯にするのではなく」
ぱちり。
「安全に、確実に味方が敵陣まで進めるように戦陣を切り開き。
敵将までの囲いを壊す」
ぱちり。
「そういう存在であると思います」
進みくる相手の王将の影にいた歩兵が、こちらの王将を追い詰めている。
「甘い、考えでしょうか」
盤の先に、にぃと笑う相手がいる。
「……いや」
苦笑を一つ。
「儂も、そう思っておるよ」
ただただ人ならざるモノを斬り伏せた。
傷つくのは自分だけでいい。
戦陣の最前を駆け抜けて、紫に染まる視界を切り裂いて。
ひたすらに目指したのは、敵の本陣。
「良い対局じゃった。また付き合うてくれるかの?
正宗……いや、雅がいない時だけと言うならば、それも構わぬ」
一瞬、相手がびくりと震える。
「時宗もお前さんを気に入っているようじゃて。
今度から家に来るときは、忍ばず正面から堂々と入って来るがよい」
「……俺、そんなに気配消すの下手ですか?」
相手の顔が少し拗ねたように歪むのが可笑しい。
「逆じゃ。お主ほどの気配が、いきなり消えたり現れたりしてみろ。
よほどのうつけ者でなければ誰でも警戒するわ」
苦笑を漏らしながら答えてやる。
相手は実に不満そうで、それが更に可笑しい。
おそらくこれが、雅がこやつを慕う理由なのだろう。
「時に。酒は嗜まれる方かのう?」
不意に問いかけると、きょとんとした顔が向けられる。
「なに、時宗には酒を付き合わせる訳には行かぬでの。
まさかその為に城に上がるわけにもいくまいて」
にっと笑ってみせてやる。
「……俺も、他のヤツらには酒の相手をさせられませぬゆえ」
にぃと悪戯好きそうな笑顔。
「今度来るときには、手土産をお持ちします」
「んむ、楽しみにしておるよ」
雨の日は、思い出す。
あの時の、あやつの笑顔を。
息子がもう一人、出来た。
自ら修羅を行くと決めた頑なな娘の心を開く相手は、
儂の自慢の息子になるはずだった。
もっと将棋を打ちたかった。話したいこともまだまだ山とあった。
奥の間に安置してある一振りの業物を見やる。
「雅」
部屋の奥に声をかける。
「今日の雨は、まるで誰かが泣いているかのようじゃよ」
返ってくる言葉などない。
いつもは側に携えるその業物は、部屋の奥に安置したまま。
天を仰いで、降りしきる雨をただ見つめる。
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風に木の葉がざわめく。
明らかに風のせいではないざわめきを隠して。
クナイが音を立てて樹の節目に突き刺さる。
金属が打ち合う高い音が響く。
ざわ、と、騒ぐ木の間に、二つの影が見えた者はいただろうか。
手裏剣が一瞬月光に光るが、これも幹に突き立つのみ。
「クウガぁ、腕落ちてねえ?」
風に乗って、飄々とした声が夜に流れる。
全く、煩い奴だ。
「手裏剣もクナイも、全然狙いがなってねえぞ」
笑っているのは、相手か木々か。
「ふん、それはお前もだろう」
わざとなのか、隠しきれてないのか。
木々を渡るあいつの音が聞こえる。
手から離れた風魔手裏剣が、枝を裂きながら虚空を目指す。
「前言撤回。狙いはいいけど、無謀すぎ」
キン、という高い音がして、手裏剣が戻ってくる。
そして、それを追う様に気配が一つ。
しかし。
「甘いぞ」
抜いた刃を突きつけるは背後。
軽い口笛が聞こえる。
「クウガ相手じゃなきゃ見破ってもらえないんだぜーこれ」
楽しそうな声音に、飄々としたものはもうない。
「それでこそクウガだよ」
弾む声が、再び夜風に溶ける。
「当たり前だ」
声を風に溶かして。
木々を揺らして、風よりも速く夜を走る。
明らかに風のせいではないざわめきを隠して。
クナイが音を立てて樹の節目に突き刺さる。
金属が打ち合う高い音が響く。
ざわ、と、騒ぐ木の間に、二つの影が見えた者はいただろうか。
手裏剣が一瞬月光に光るが、これも幹に突き立つのみ。
「クウガぁ、腕落ちてねえ?」
風に乗って、飄々とした声が夜に流れる。
全く、煩い奴だ。
「手裏剣もクナイも、全然狙いがなってねえぞ」
笑っているのは、相手か木々か。
「ふん、それはお前もだろう」
わざとなのか、隠しきれてないのか。
木々を渡るあいつの音が聞こえる。
手から離れた風魔手裏剣が、枝を裂きながら虚空を目指す。
「前言撤回。狙いはいいけど、無謀すぎ」
キン、という高い音がして、手裏剣が戻ってくる。
そして、それを追う様に気配が一つ。
しかし。
「甘いぞ」
抜いた刃を突きつけるは背後。
軽い口笛が聞こえる。
「クウガ相手じゃなきゃ見破ってもらえないんだぜーこれ」
楽しそうな声音に、飄々としたものはもうない。
「それでこそクウガだよ」
弾む声が、再び夜風に溶ける。
「当たり前だ」
声を風に溶かして。
木々を揺らして、風よりも速く夜を走る。
誰よりも速く戦陣を駆け抜ける、その後姿を追うのが好きだった。
風の様に駆け抜けて、おいら達には怪我のないように。
いつもヘラヘラ笑いながら、おいら達に気をかけてくれていた。
誰よりも強くて、誰よりもやさしい、おいら達の御館様。
クウガの旦那も良くしてくれるけれど、
やっぱりおいら達の御館はあんただけだ。
正宗様も捕まっちまって、今はどこに捕らわれてるかわかりゃしない。
情けない。
おいら達は、御館に何もできない。
「……なぁ、お前ら」
「へい?」
「お前らの主人の雪辱、晴らしたくはないか」
ざわり。
動揺が走る。
「少なくとも。俺はこのままでは気が済まん」
「だ、だけんどクウガ様。どうやって……」
「案ずるな、俺以上に腹に据えかねておられる方がいらっしゃる」
ざわざわ。
人が集まってくる。
「お前達の主を元に戻すことはできん。
しかし、だからこそ」
普段からおっかない声が、更に気迫を帯びていた。
「許してはならんことがあるということを教えてやろう」
御館が捕らえられて半月後の夏の日。
古狸の家に官吏が入っていった。
「なんじゃ、騒々しい」
「家老殿。叛逆罪の咎により、主上より裁きがあります。白砂までご同行を」
手には、真新しい業物。
その業物は、御館様のものだ。
みなの声が揃って、家老の声がうるさそうに歪んでいた。
「往生際が悪いぞ、古狸」
「猛将殿。いかに貴公といえどその口は……」
「黙れといっておろう」
ぎらりと睨む猛将久宗公を前に、古狸も黙るしかないのは見ていてすっとした。
「まず、その業物は儂の娘じゃ。それ以上汚い手で触られてはかなわん」
有無をいわさず、手の業物をとられる。
「すべては白砂で聞かせてもらおうぞ。
儂をコケにした報いくらいは受けてもらうぞ」
蛇に睨まれた蛙って、きっとあんな顔なんだろうな、御館様。
御館様にもあの時の家老の顔見て欲しかっただよ。
あれから更に月日が経った。
おいら達も、地獄に落ちるのかな。
皆で御館様の社の前でお参りしただな。聞いててくれただか?
「御館様。おいら達、ずっと御館様の部下でいいだよな?
死んだら、また仕えさせてくれるよな」
風の様に駆け抜けて、おいら達には怪我のないように。
いつもヘラヘラ笑いながら、おいら達に気をかけてくれていた。
誰よりも強くて、誰よりもやさしい、おいら達の御館様。
クウガの旦那も良くしてくれるけれど、
やっぱりおいら達の御館はあんただけだ。
正宗様も捕まっちまって、今はどこに捕らわれてるかわかりゃしない。
情けない。
おいら達は、御館に何もできない。
「……なぁ、お前ら」
「へい?」
「お前らの主人の雪辱、晴らしたくはないか」
ざわり。
動揺が走る。
「少なくとも。俺はこのままでは気が済まん」
「だ、だけんどクウガ様。どうやって……」
「案ずるな、俺以上に腹に据えかねておられる方がいらっしゃる」
ざわざわ。
人が集まってくる。
「お前達の主を元に戻すことはできん。
しかし、だからこそ」
普段からおっかない声が、更に気迫を帯びていた。
「許してはならんことがあるということを教えてやろう」
御館が捕らえられて半月後の夏の日。
古狸の家に官吏が入っていった。
「なんじゃ、騒々しい」
「家老殿。叛逆罪の咎により、主上より裁きがあります。白砂までご同行を」
手には、真新しい業物。
その業物は、御館様のものだ。
みなの声が揃って、家老の声がうるさそうに歪んでいた。
「往生際が悪いぞ、古狸」
「猛将殿。いかに貴公といえどその口は……」
「黙れといっておろう」
ぎらりと睨む猛将久宗公を前に、古狸も黙るしかないのは見ていてすっとした。
「まず、その業物は儂の娘じゃ。それ以上汚い手で触られてはかなわん」
有無をいわさず、手の業物をとられる。
「すべては白砂で聞かせてもらおうぞ。
儂をコケにした報いくらいは受けてもらうぞ」
蛇に睨まれた蛙って、きっとあんな顔なんだろうな、御館様。
御館様にもあの時の家老の顔見て欲しかっただよ。
あれから更に月日が経った。
おいら達も、地獄に落ちるのかな。
皆で御館様の社の前でお参りしただな。聞いててくれただか?
「御館様。おいら達、ずっと御館様の部下でいいだよな?
死んだら、また仕えさせてくれるよな」
ほねほねくろっく
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HN:
詩柳耶琴
性別:
非公開
自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
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といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
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