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絵とかなんとか色々置いておく場所です。
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主殿4
友人が書いてくれたSSにカッとなって書いた。

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 悔いがない、といえば嘘になる。
 決して、叶えられはしないけれど。
 もしも、願ってもいいのなら。


「下らん諍いに首を突っ込みおって……
 終いまで欺き通せばよかったのだ、馬鹿が」

 封印の儀が行われるまでの僅かな時間。
 面会に来てくれたのは、クウガだった。
 俺は烈将、こいつは忍方。
 立場は違っても、同じ師の元で学んだ仲間。
 その生真面目な声も、眉根を寄せるいつもの顔も。
 もう、かすんでよく見えない。

「馬鹿呼ばわりはねぇだろー、酷い奴だな相変わらず」

 自分の声もくぐもって聞こえる。まるで水の中にでもいるみたいだ。

「煩い黙れ。忍びが情を持ってどうする馬鹿が」

 物言いは師匠そっくりだ。クウガの方が硬い声音だけどな。

「いいじゃねえか、忍びだって人間だ。つってももう人間じゃねえがな」

 そう、もうこのカラダは生身じゃない。
 社に封ぜられる悪霊。それが今の俺。
 生身で自由に動き回れないなんざ、退屈すぎて暴れたくなるだろうから。
 そしたらきっと。俺は天津を壊しちまう。
 だから、俺は御魂になった。

「……俺は、貴様が気に喰わなんだ」

 きっと、こいつもそれを知っている。

「そーかい、俺は嫌いじゃなかったぜ」

 にい、と笑ったつもりだが、相手にどう見えたかはこの際考えない。
 霧が満ちているような視界の中、相手の生真面目な顔が少しだけ歪んだ気がした。

「クウガ殿、烈将殿。封印の儀、仕度が整いまして御座る」

 法衣をまとった僧侶が視界の端に見える。

「分かった。すまんがもう少しだけ、待ってくれ」

 少しだけ、クウガの声音が震えている。

「クウガよぉ、残った俺の部下の面倒、頼むな」

「……残った、と言っても一握りだがな。無碍にはせん……否、させんさ」

「ん、安心した。始めてくれ」

 最期まで、俺は道化だ。
 本当は、もっと言いたいことがある。
 本当は、他に聞きたいことがある。
 けれど。
 きっと聞いてしまったら止まらなくなる。

「心残りが一つだけあるぞ、烈将」

 クウガの声が、昔のような優しい声になっている。

「その姿になる前の貴様と、勝負をつけたかった」

 ……ったく、こいつは本当に相変わらずだ。

「今更言うなよ、馬鹿」

 そいつは俺の科白だ。
 お前は、俺が本気を出せる唯一の相手だったんだから。
 祈詞が紡がれるたび、身体が軽くなっていくのを感じる。

「さらばだ、烈将。我が好敵手」

 わざと格好付けた口調に笑いそうになる。

「おう、地獄に落ちたら遊びに来い」

 手を振ってみせたつもりだけれど。
 きっと相手には見えなかっただろう。
 眠りに付くように。意識が落ちていく。
 次に目が覚めるとき、俺の側には誰もいないはずだ。
 永遠に続く暗闇。そこが、俺の世界になる。
 



 決して悔いがない、なんて嘘だ。
 願っても、叶えられやしない。
 だから、瞳を閉じる。
 瞼の裏に、日常を描く。
 賑やかな庭。
 ずっと側にいてくれた穏やかな笑顔。
 優しくて、おっとりした声と。
 誰よりも愛おしい、涼やかな声。
 ああ、ちゃんと聞こえてるから、そんなに呼ぶなっつの。

「てめえら、花見行くぞ花見」

 さぁ。叶わなかった宴をしよう。
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場

といいつつ、いろいろ詰め込んであります。

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