絵とかなんとか色々置いておく場所です。
穏やかな日中。
物音一つしない静かなこの空間は、落ち着くものになって久しい。
あるのは、庭の獅子脅しが規則正しく奏でる高い音と、鳥達の歌う声。
そして、手元の本がかすかに出す、紙ずれの音。
「……珍しいお客様だね。こんな病人相手に何か御用かな?」
虚空に声を投げる。
当然、応えるモノはない。
「出ておいで。今なら誰も来ないよ」
静寂、しかないはずの空間。
誰も来ないはずの廊下に、気配が一つ。
「いつからお気付きで……?」
「そうだね、君が堀を越えた辺りからかな」
ゆったりと言葉を紡ぐ。
「使い走るようで申し訳ないが、障子を開けてくれるかい? きちんと君の姿を見たい」
音もなく障子が開く。
「初めまして、というべきかな。烈将殿?」
目線を向ければ、悪戯が見つかって叱られたような風な青年が一人。
「……お初にお目にかかります、知恵方殿。誉れはかねがね」
「そんなにかしこまらなくともいいよ。堅苦しい付き合いは苦手だろう?」
渋々といった体の相手に、苦笑をしながら声をかけてやる。
「いつも妹が世話になっているね」
「そんな……」
「こんな体でなければ、こちらから挨拶に出向くところなのだけれど。
お構いも出来ず、申し訳ないね」
極力緊張を解くように言葉を紡いだつもりなのだが、相手はまるで借りてきた猫のように強ばって動かない。
見てみれば、筋骨隆々とは言わないが、病弱なこの身とは対照的なしなやかな体つきをしている。二つ名を連想するには少々貧弱な気もするが、戦場を駆ける時にはきっと別人のようになるのだろう。
「君の事は良く話を聞くよ。強く、優しい方だと」
「どうも……」
言葉は返してくれるものの、やはりどこかやりづらそうだ。
「私も、知恵方殿の話をよくお聞きします。自慢の、兄だと」
「ふふ、それは嬉しいね。もしかしたら、君の兄にもなるかもしれないけれど」
びくり。相手の体が震える。
「今日の用事も、そのことだろう?」
「……どこまで、ご存知ですか」
「そうだね。本人はそんなに自覚してないみたいだけれど、妹が君を慕っていることは
十二分に、というところかな」
くすり、と笑ってみせる。
「そうでなくとも、君とは一度話をしたかった。
僕はこの通りの体だからね、同じ年頃の友人というものがいないまま過ごしてきた」
相手の顔が上がる。
「もう先も長くない。僕の体は今、病とは別なモノに蝕まれようとしている」
「知恵方……」
「時宗でいいよ」
にこり、と笑ってみせる。
もしも弟というものがいたならば、きっとこんなかんじなのだろう。
「どうやら僕が邪魔で仕方ないという方がいるようでね。
まったく、病人が相手だからと舐められたものだよ」
きっと聞こえているであろう、もう一人の相手に毒を吐いてやる。
「……長く話してしまったね。そろそろ戻ったほうがいい。
もし気がむいたなら、また会いに来ておくれ。今度は何か用意しておくから」
「……ああ。約束する」
獅子脅しの高い音と、鳥達の歌声。
それから、ちょくちょく側にあってくれるようになった、心地いい気配。
守りたかった、平穏な日々。
物音一つしない静かなこの空間は、落ち着くものになって久しい。
あるのは、庭の獅子脅しが規則正しく奏でる高い音と、鳥達の歌う声。
そして、手元の本がかすかに出す、紙ずれの音。
「……珍しいお客様だね。こんな病人相手に何か御用かな?」
虚空に声を投げる。
当然、応えるモノはない。
「出ておいで。今なら誰も来ないよ」
静寂、しかないはずの空間。
誰も来ないはずの廊下に、気配が一つ。
「いつからお気付きで……?」
「そうだね、君が堀を越えた辺りからかな」
ゆったりと言葉を紡ぐ。
「使い走るようで申し訳ないが、障子を開けてくれるかい? きちんと君の姿を見たい」
音もなく障子が開く。
「初めまして、というべきかな。烈将殿?」
目線を向ければ、悪戯が見つかって叱られたような風な青年が一人。
「……お初にお目にかかります、知恵方殿。誉れはかねがね」
「そんなにかしこまらなくともいいよ。堅苦しい付き合いは苦手だろう?」
渋々といった体の相手に、苦笑をしながら声をかけてやる。
「いつも妹が世話になっているね」
「そんな……」
「こんな体でなければ、こちらから挨拶に出向くところなのだけれど。
お構いも出来ず、申し訳ないね」
極力緊張を解くように言葉を紡いだつもりなのだが、相手はまるで借りてきた猫のように強ばって動かない。
見てみれば、筋骨隆々とは言わないが、病弱なこの身とは対照的なしなやかな体つきをしている。二つ名を連想するには少々貧弱な気もするが、戦場を駆ける時にはきっと別人のようになるのだろう。
「君の事は良く話を聞くよ。強く、優しい方だと」
「どうも……」
言葉は返してくれるものの、やはりどこかやりづらそうだ。
「私も、知恵方殿の話をよくお聞きします。自慢の、兄だと」
「ふふ、それは嬉しいね。もしかしたら、君の兄にもなるかもしれないけれど」
びくり。相手の体が震える。
「今日の用事も、そのことだろう?」
「……どこまで、ご存知ですか」
「そうだね。本人はそんなに自覚してないみたいだけれど、妹が君を慕っていることは
十二分に、というところかな」
くすり、と笑ってみせる。
「そうでなくとも、君とは一度話をしたかった。
僕はこの通りの体だからね、同じ年頃の友人というものがいないまま過ごしてきた」
相手の顔が上がる。
「もう先も長くない。僕の体は今、病とは別なモノに蝕まれようとしている」
「知恵方……」
「時宗でいいよ」
にこり、と笑ってみせる。
もしも弟というものがいたならば、きっとこんなかんじなのだろう。
「どうやら僕が邪魔で仕方ないという方がいるようでね。
まったく、病人が相手だからと舐められたものだよ」
きっと聞こえているであろう、もう一人の相手に毒を吐いてやる。
「……長く話してしまったね。そろそろ戻ったほうがいい。
もし気がむいたなら、また会いに来ておくれ。今度は何か用意しておくから」
「……ああ。約束する」
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それから、ちょくちょく側にあってくれるようになった、心地いい気配。
守りたかった、平穏な日々。
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詩柳耶琴
性別:
非公開
自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。
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なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
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