絵とかなんとか色々置いておく場所です。
そもそも屋敷に居候させていただくことになった理由は、主殿の片腕として戦以外の場でも側にいて、いち早く情報を渡せるように、とのこと。実際は主上へ
の拝謁を面倒くさがる主殿に代わって主上からのお達しを伝えることと、時々打ち合いの相手をする程度なのだけど。
しかしこの数ヶ月。主殿はあまり私を側に置かなくなった。視線を感じてそちらを向けば主殿がいるのだが、すぐに視線を外して他の者のほうに行ってしまう。
何か粗相でもしただろうか。気に障ることを言ってしまったのだろうか。
考えてみても思い当たる節はなく。
どちらかといえば、この前の夜に抱きしめられたことの方が気になる。
思えば、主殿がおかしくなったのはあの時からだ。
「正宗殿。何かございましたかな?」
ふと顔を上げると、主殿の側仕えである金剛が立っていた。
「いや、何も……」
金剛という名が本名かどうかは知らないが、その名の通り筋骨隆々の大男で、元は修験者だったというだけあって、兄上とは別な意味で落ち着いていて、相談しやすい相手だ。
しかし、今回のことについては相談してはいけない気がした。
「御館様のこと、でしょうか?」
びくり。
思わず相手を見返す。
「当たってしまったようですな」
相手は穏やかに苦笑を漏らすだけだ。
何故だろう。やはり、そうだ。主殿の名を出されるだけで、心臓がうるさい。
「なぁ、金剛」
「なんですかな」
「私は、主殿にどう見えているのだろう」
ぽつり。
「主殿にとって私は、側にいなくてもいい存在なのだろうか」
言葉が落ちる。
父上にも、兄上にも。誰にもいえない。
主殿は生粋の戦人。戦場に女など不要、という方で、くの一を連れるにしても最低数に限っている。
そう思えば、あの夜から主殿がおかしいのも説明がつこうというものだ。
「正宗殿」
優しく金剛が声をかけてくれる。
「大丈夫ですよ。御館様にとって正宗殿はいなくてはならぬ方です」
にっこりと笑ってくれる。
市井の父御というのは、多分こんな感じなのだろう。
「そう、だろうか」
「ええ」
妙に自信ありげに金剛は答える。
「嘘だと思うなら、御館様のところにいってごらんなさい。
今なら確か書状をしたためていたと思いますよ」
「ん、ありがとう。いってくる」
そうだ、思い悩んでも答えなど出ないのだ。
軽く裾をはたいて、屋敷の中へ向かう。
「金剛殿~……」
「なんだ、お前らいたのか」
振り返れば、忍び装束の者達が数名、白い壁からにゅぅと顔を覗かせている。
「なんであんなこと言っちゃうんですか~……
間違いなく御館にとられちゃうじゃないですか」
「そうですよー。今日だってそりゃあひどいもんなんですから」
頭巾に隠れて見えはしないが、皆涙を流しているようだ。
そう、正宗と名乗る智将が女性であることは皆が知っていた。ただ一人、御館と仰がれるあの青年以外は。
涼やかな立ち振る舞いと、優雅な物腰。正宗本人は知る由もなかったはずだが、彼女に焦がれる者は数知れずなのである。
「そう言うな。御館様も正宗殿への思慕をはっきり自覚してしまった以上、ああ言うしかあるまいて」
「それはわかってるけどっ」
おいおいと咽び泣く者達の中、金剛の顔は晴れやかだった。
「さて、様子を見に行くかな……」
「ああっ、俺達もいくっす!」
「いいのか? お前達にはちときついかもしれぬぞ?」
苦笑を漏らしてゆっくりと屋敷へ向かう。
平穏な、天津の一日。
の拝謁を面倒くさがる主殿に代わって主上からのお達しを伝えることと、時々打ち合いの相手をする程度なのだけど。
しかしこの数ヶ月。主殿はあまり私を側に置かなくなった。視線を感じてそちらを向けば主殿がいるのだが、すぐに視線を外して他の者のほうに行ってしまう。
何か粗相でもしただろうか。気に障ることを言ってしまったのだろうか。
考えてみても思い当たる節はなく。
どちらかといえば、この前の夜に抱きしめられたことの方が気になる。
思えば、主殿がおかしくなったのはあの時からだ。
「正宗殿。何かございましたかな?」
ふと顔を上げると、主殿の側仕えである金剛が立っていた。
「いや、何も……」
金剛という名が本名かどうかは知らないが、その名の通り筋骨隆々の大男で、元は修験者だったというだけあって、兄上とは別な意味で落ち着いていて、相談しやすい相手だ。
しかし、今回のことについては相談してはいけない気がした。
「御館様のこと、でしょうか?」
びくり。
思わず相手を見返す。
「当たってしまったようですな」
相手は穏やかに苦笑を漏らすだけだ。
何故だろう。やはり、そうだ。主殿の名を出されるだけで、心臓がうるさい。
「なぁ、金剛」
「なんですかな」
「私は、主殿にどう見えているのだろう」
ぽつり。
「主殿にとって私は、側にいなくてもいい存在なのだろうか」
言葉が落ちる。
父上にも、兄上にも。誰にもいえない。
主殿は生粋の戦人。戦場に女など不要、という方で、くの一を連れるにしても最低数に限っている。
そう思えば、あの夜から主殿がおかしいのも説明がつこうというものだ。
「正宗殿」
優しく金剛が声をかけてくれる。
「大丈夫ですよ。御館様にとって正宗殿はいなくてはならぬ方です」
にっこりと笑ってくれる。
市井の父御というのは、多分こんな感じなのだろう。
「そう、だろうか」
「ええ」
妙に自信ありげに金剛は答える。
「嘘だと思うなら、御館様のところにいってごらんなさい。
今なら確か書状をしたためていたと思いますよ」
「ん、ありがとう。いってくる」
そうだ、思い悩んでも答えなど出ないのだ。
軽く裾をはたいて、屋敷の中へ向かう。
「金剛殿~……」
「なんだ、お前らいたのか」
振り返れば、忍び装束の者達が数名、白い壁からにゅぅと顔を覗かせている。
「なんであんなこと言っちゃうんですか~……
間違いなく御館にとられちゃうじゃないですか」
「そうですよー。今日だってそりゃあひどいもんなんですから」
頭巾に隠れて見えはしないが、皆涙を流しているようだ。
そう、正宗と名乗る智将が女性であることは皆が知っていた。ただ一人、御館と仰がれるあの青年以外は。
涼やかな立ち振る舞いと、優雅な物腰。正宗本人は知る由もなかったはずだが、彼女に焦がれる者は数知れずなのである。
「そう言うな。御館様も正宗殿への思慕をはっきり自覚してしまった以上、ああ言うしかあるまいて」
「それはわかってるけどっ」
おいおいと咽び泣く者達の中、金剛の顔は晴れやかだった。
「さて、様子を見に行くかな……」
「ああっ、俺達もいくっす!」
「いいのか? お前達にはちときついかもしれぬぞ?」
苦笑を漏らしてゆっくりと屋敷へ向かう。
平穏な、天津の一日。
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
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なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
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