絵とかなんとか色々置いておく場所です。
「正宗殿」
十将宣下に伴う主上へのお目通りを済ませ、城を出ると武将が数人待ち構えていた。
皆私よりも倍近い身の丈の偉丈夫だ。
「これはこれは武芸方の。お揃いで何用でしょう」
聞かずとも分かるが、あえて静かに問う。
「この度十将に数えられたこと誠にめでたく。ついては我らと手合わせを願いたい」
出来る限り敬を払っているような口調ではあるが、にやついた顔を見ればそうでないことなど一目瞭然だ。要するに武将然としていない私を打ち倒したいのだろう。
「よいでしょう。どちらへ?」
「智将殿は修練場の場所をご存知ではないのですな。ご案内いたしましょう」
物言いが明らかに上から目線だったのはさらりと流し、武将達に付いて歩く。
着いたのは城外の一画。人通りのない区画で、ご丁寧に高い塀で囲まれている。
「ここが修練場。我ら武芸衆以外は近づかない処です。
市井の者達の中には、稽古中の気迫でおびえてしまう者もいますからな」
なるほど、ここであれば悲鳴をあげようとも助けに来る者などいないだろう。
「ここでは実際の刀は使わず、竹光を使うのが慣わし。こちらを」
言われるまま、武器庫から出された竹光を受け取る。
竹光とはいえ、刃がないというだけで実際のそれと変わりはしない。
バラバラと、将達が私を取り囲む。
「覚悟はよろしいかな?」
「いつでも」
私は剣を構えない。武将達のにやついた顔から一瞬表情が消えて、一人が正面から駆け込んでくる。
遅い。わざと刃が届く距離まで待って、するりと身を躱す。
「え?」
何が起こったか分かっていないらしい駆け込んできた武将の背を押して地に伏させ、同時に後ろから斬りかかってきた将の胴に一撃。
「ぬるい。全員でかかってこられよ」
胴に一撃では足りなかったらしい相手にもう一撃加えながら、他の武将達に告げる。
言うまでもなかったようで、残りの武将が全員こちらに向かってくる。
竹光の間をすり抜け、片方ではお互いに顔をぶつけ合って倒れているのを見つつ、もう片方で向かってきた将の顔を打ち付ける。鼻骨を折ったかもしれないが、まぁ因果応報と思ってもらおう。
全く統率の取れていないのだから、相手がいくらかかってこようと同じことだ。
「ええい、ひらりひらりと……!」
「それだけの数がいて、一人も私を捕らえられぬのはどういうことか?」
怒りと焦りの滲む声とともに突き出された剣をさらりと返す。
そして、最後の一人を叩く。
息をつけば、周囲にはうずくまる将達が見える。
ある者は腹を押さえ、ある者は顔面を押さえ、ある者はその場に倒れたままだ。
さて、竹光を戻さなくてはならないのかな、などと考えていると、塀の方から気配を感じた。
「覗き見とは質の悪い。降りてまいられよ」
「気配、消してたんだけどな……」
聞こえたのは、どこか飄とした雰囲気のする若い男の声。
言っている内容からして忍び者、だろうか?
「ほう。それならば貴公はまだ新しい草か?」
何故だか知らない。少し興味がわいた。
声のほうを向くと、塀の上に青年が一人座っているのが見える。
目の合った一瞬、相手の体がびくりと震えた気がしたが、気のせいだろうか?
「いかがなされた」
「いや、なんでも」
まるで猫のような身軽さで、音一つせず地に下りる。
蹲る将の傍らの竹光を拾い上げながら、こちらへ歩いてくる。
先ほどまで相手をしていた将達とは違う、雰囲気。
何の気なく歩いてきているようだが、隙など一切感じない。
「名を聞きたい」
飄とした声音のまま、相手の言葉が紡がれる。
「正宗」
応えるは、一言。
相手の口角が上がる。
「俺は――」
思えば、あの時から焦がれていたのかもしれない。
病の兄上に成り代わり自分が将となると決めてから、私は男であろうとしてきた。
しかし。
あの時の飄々とした態度の相手は、そっと私を抱きしめたままだ。
「ぬし、どの?」
「正宗。」
声をかければ、私を呼んでくださる。
「……雅とお呼び下さいませ。今だけは」
今だけは、“雅”として貴方の側にいたいのです。
いつも、最後までは言えない。
少しだけ、私を抱く腕に力がこもる。
烈将と呼ばれ、戦の時にはぞくりとするほどに残虐な目をする相手が、壊れ物でも扱うように私に触れるのがなんだかくすぐったくて。
髪に手を滑らされるのも心地いい。
いつまでも、続けばいい。
いつかは、ちゃんと最後まで言えるといい。
言えなくたって、構いはしないのだけど。
だって、私は、いつまでも主殿の側にお仕えすると決めたのだから。
今は、ただ。この暖かい心音に抱かれたまま、まどろみを楽しむ。
十将宣下に伴う主上へのお目通りを済ませ、城を出ると武将が数人待ち構えていた。
皆私よりも倍近い身の丈の偉丈夫だ。
「これはこれは武芸方の。お揃いで何用でしょう」
聞かずとも分かるが、あえて静かに問う。
「この度十将に数えられたこと誠にめでたく。ついては我らと手合わせを願いたい」
出来る限り敬を払っているような口調ではあるが、にやついた顔を見ればそうでないことなど一目瞭然だ。要するに武将然としていない私を打ち倒したいのだろう。
「よいでしょう。どちらへ?」
「智将殿は修練場の場所をご存知ではないのですな。ご案内いたしましょう」
物言いが明らかに上から目線だったのはさらりと流し、武将達に付いて歩く。
着いたのは城外の一画。人通りのない区画で、ご丁寧に高い塀で囲まれている。
「ここが修練場。我ら武芸衆以外は近づかない処です。
市井の者達の中には、稽古中の気迫でおびえてしまう者もいますからな」
なるほど、ここであれば悲鳴をあげようとも助けに来る者などいないだろう。
「ここでは実際の刀は使わず、竹光を使うのが慣わし。こちらを」
言われるまま、武器庫から出された竹光を受け取る。
竹光とはいえ、刃がないというだけで実際のそれと変わりはしない。
バラバラと、将達が私を取り囲む。
「覚悟はよろしいかな?」
「いつでも」
私は剣を構えない。武将達のにやついた顔から一瞬表情が消えて、一人が正面から駆け込んでくる。
遅い。わざと刃が届く距離まで待って、するりと身を躱す。
「え?」
何が起こったか分かっていないらしい駆け込んできた武将の背を押して地に伏させ、同時に後ろから斬りかかってきた将の胴に一撃。
「ぬるい。全員でかかってこられよ」
胴に一撃では足りなかったらしい相手にもう一撃加えながら、他の武将達に告げる。
言うまでもなかったようで、残りの武将が全員こちらに向かってくる。
竹光の間をすり抜け、片方ではお互いに顔をぶつけ合って倒れているのを見つつ、もう片方で向かってきた将の顔を打ち付ける。鼻骨を折ったかもしれないが、まぁ因果応報と思ってもらおう。
全く統率の取れていないのだから、相手がいくらかかってこようと同じことだ。
「ええい、ひらりひらりと……!」
「それだけの数がいて、一人も私を捕らえられぬのはどういうことか?」
怒りと焦りの滲む声とともに突き出された剣をさらりと返す。
そして、最後の一人を叩く。
息をつけば、周囲にはうずくまる将達が見える。
ある者は腹を押さえ、ある者は顔面を押さえ、ある者はその場に倒れたままだ。
さて、竹光を戻さなくてはならないのかな、などと考えていると、塀の方から気配を感じた。
「覗き見とは質の悪い。降りてまいられよ」
「気配、消してたんだけどな……」
聞こえたのは、どこか飄とした雰囲気のする若い男の声。
言っている内容からして忍び者、だろうか?
「ほう。それならば貴公はまだ新しい草か?」
何故だか知らない。少し興味がわいた。
声のほうを向くと、塀の上に青年が一人座っているのが見える。
目の合った一瞬、相手の体がびくりと震えた気がしたが、気のせいだろうか?
「いかがなされた」
「いや、なんでも」
まるで猫のような身軽さで、音一つせず地に下りる。
蹲る将の傍らの竹光を拾い上げながら、こちらへ歩いてくる。
先ほどまで相手をしていた将達とは違う、雰囲気。
何の気なく歩いてきているようだが、隙など一切感じない。
「名を聞きたい」
飄とした声音のまま、相手の言葉が紡がれる。
「正宗」
応えるは、一言。
相手の口角が上がる。
「俺は――」
思えば、あの時から焦がれていたのかもしれない。
病の兄上に成り代わり自分が将となると決めてから、私は男であろうとしてきた。
しかし。
あの時の飄々とした態度の相手は、そっと私を抱きしめたままだ。
「ぬし、どの?」
「正宗。」
声をかければ、私を呼んでくださる。
「……雅とお呼び下さいませ。今だけは」
今だけは、“雅”として貴方の側にいたいのです。
いつも、最後までは言えない。
少しだけ、私を抱く腕に力がこもる。
烈将と呼ばれ、戦の時にはぞくりとするほどに残虐な目をする相手が、壊れ物でも扱うように私に触れるのがなんだかくすぐったくて。
髪に手を滑らされるのも心地いい。
いつまでも、続けばいい。
いつかは、ちゃんと最後まで言えるといい。
言えなくたって、構いはしないのだけど。
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
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