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絵とかなんとか色々置いておく場所です。
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人払いされた、天津の地。


人知れず行われた、土地神の儀式。

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「……本当によろしいのか、陰陽方」

「良いも悪いも。私以外に務まることではありませぬ」

 にこり、と笑ってみせる。

「確かに今は良いでしょう。新たに城主となられた吉朝様は呪術にも通じておられます」

 禊の済んだ身で、他のものに触れることは出来ないから。
 祭壇への段を一つはさんで、相対する。

「しかし、人は忘れるものです」

「ああ……」

「この天津を妖怪達から守るため。そして、彼らを守るため。
 誰かが、封印を視ていなくてはならないのですよ。クウガ殿」

 いつかの封印の儀に見たような、歪んだ顔をしている相手に笑ってみせる。
 といっても、眉根の詰まり具合がほんの少し違うだけだ。おそらく、他の者が見たなら、既に封じられた彼以外は見破ることなど出来ないだろう。

「しかし、地神である貴方が……」

「だからこそ、です」

 ほんの少しだけ震えている声を途中で切る。

「だからこそ。この身が輪廻する理由が出来るのですよ」

 出来る限り近づいて。そっと、相手の頬に触れるか否かほどに手を伸ばす。

「この身が輪廻ることが、無為でないと、そう言えるのですよ」

 真っ直ぐに見返すその瞳。普段は一寸たりと動かないその眼に、少し涙が溜まっているように見える。
 ああ。やはり貴方は優しい方です、クウガ殿。
 踵を返し、祭壇へ上る。

「さあ、早くお行きくださいませ。
 貴方を呪式に巻き込んでしまっては、烈将殿に怒られてしまいます」

 決して、振り返ることはしない。
 禊の、最後の仕上げ。
 祭壇の最上段。四方に据え付けられた松明が、激しく燃え上がる。

「畏み畏み八百万の神」

 祈詞を紡ぎ、この地に集う霊に呼びかける。
 かつては、妖が跋扈したこの地。
 この平穏を、守るため。

「輪廻紡ぐ糸 我が繰糸の先 永劫に途切れざることを」

********************************************************


 目の前には、正装の巫女。
 禊を済ませたその身は、その本性をうかがわせるには十分すぎるほど。

「本当に、よろしいのか。陰陽方」

「良いも悪いも。私以外に務まるものではありませぬ」

 にこりと笑うその顔はいつもどおり。
 何を考えているのかまったく見えない、完璧な笑顔という名の仮面。

「確かに今はいいでしょう。新たに城主となられた吉朝様は呪術にも通じておられます。
 しかし、人は忘れるものです」

「ああ……」

 紡がれる静かな声は、真実。

「この天津を妖怪達から守るため。そして、彼らを守るため。
 誰かが、封印を視ていなくてはならないのですよ。クウガ殿」

 一段だけ離れたその場所で笑っている、まだあどけなさすら残る姿。

「しかし、地神である貴方が……」

「だからこそ、です」

 静かな声が、響く。

「だからこそ。この身が輪廻する理由が出来るのですよ」

 そっと、頬に触れるか否かほどのところまで手が伸びる。

「この身が輪廻ることが、無為でないと、そう言えるのですよ」

 柔らかな微笑を残して細い手が離れて。
 巫女の背中が祭壇を登っていく。

「さあ、早くお行きくださいませ。
 貴方を呪式に巻き込んでしまっては、烈将殿に怒られてしまいます」

 どこまでも静かな声が、背中から聞こえる。
 巻き込まれたって、構いやしない。
 何故、皆俺をおいていく。
 背中は、何も応えずに祭壇の最上段に立った。
 松明が激しく燃え、静かな声が紡ぐ祈りが、空に昇っていく。

「輪廻紡ぐ糸 我が繰糸の先 永劫に途切れざることを」



 ああ……後世の俺がなんと言うかなど知らん。
 俺の自己満足で良い。
 たとえ輪廻の果て、忘れてしまっても。
 何度でも、会えるように。
 次の世でこそ

「……共に、長く笑いあえんことを」
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場

といいつつ、いろいろ詰め込んであります。

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