絵とかなんとか色々置いておく場所です。
「今日はここまでにしましょう、行信殿。
随分読み込んでいるようですが……ただ文字を追うのでなく、何故かと疑問を持ちながら読むようにするといいですよ」
「はい、ありがとうございます。知恵方」
「時宗で良い、と言っているのに。」
床の中、上体だけを起こしながら柔らかく笑う知恵方 時宗公。
普通の子よりも少し体の弱い僕が、知識も学ぶように、と、知恵方につけられたのは、物心つく少し前のこと。思えば、いつまでも武芸の上達しない僕は、見限られていたのかもしれない。
知恵方は、物覚えのいいとはいえない僕を蔑んだり貶したりせず、一つ一つ絡んだ糸を丁寧に解くように教えを授けてくれた。知恵方は当時15を数えたばかりで、僕と2つしか変わらなかったが、父上にも叔父上にも感じない存在の大きさを感じていたのを覚えている。
「にいさま、おしごとおわりですか?」
「ああ。入っておいで、雅」
「はいっ! あ、ゆきのぶさま、おじゃまいたしますっ」
講義が終わると、決まって知恵方の妹姫がやってきた。
外を出歩けない知恵方の希望で、いつも障子は開け放してある。
風が室内をかけるよりも、彼女が来るとその場が明るくなった気がした。
知恵方の膝に乗って、知恵方の話すお伽噺を楽しそうに聞く彼女。
いつの間にか、僕は彼女と話すことが楽しみになっていた。
天津平定の大武将の一人、猛将の娘。
年を重ねても、彼女は僕に笑顔で接してくれた。
しかし年を重ねると、彼女は稽古着や男装でいることが多くなった。
「行信様、いらっしゃいませ」
「雅、また武芸の稽古をしているのかい?」
「はい。十将に列せられるには、もっと強くならなくては」
いつでも、彼女が見ている先は、前だけだった。
彼女が“久条 正宗”として十将宣下を受けることを聞いたのは、それから数ヶ月。
「叔父上、雅姫の十将宣下、取り下げてはいただけぬのですか」
行灯の火だけが、ゆらゆらと明かりを灯している。
「無理を言うな。儂とて十将の一人。おいそれと主上に進言できるものではない」
「そん、な……」
行灯に虫が飛び込んだらしく、炎が一瞬燃え上がるのを聞き逃して、闇にうなだれたのは、まだ記憶に新しい。
思えば、叔父上の行動が変わったのは、この頃だったかもしれない。
遠くで、鬨の声が響いている。
きっと、あの姫の声もあの中にあるのだろう。
「雅……」
僕はただ、彼女に笑っててほしかった。
『私は、あの方についていくと決めた。そこが、終の果てであっても』
瞼に浮かぶ、烈将への思いを聞いたときの、顔を赤らめた表情。
今まで見たことのない、幸せそうな笑顔。
僕は、こんなことを、望んでいたわけじゃないのに。
手の甲に爪が食い込んでいる。
痛みは感じるが、そんなことどうでもいい。
僕は、情けない。
武芸を修め、知識を修めても
僕は、叔父上の傀儡でしかない
「力を望むかい? 樫平の若造よ?」
部屋の奥から、黒い声がする。
随分読み込んでいるようですが……ただ文字を追うのでなく、何故かと疑問を持ちながら読むようにするといいですよ」
「はい、ありがとうございます。知恵方」
「時宗で良い、と言っているのに。」
床の中、上体だけを起こしながら柔らかく笑う知恵方 時宗公。
普通の子よりも少し体の弱い僕が、知識も学ぶように、と、知恵方につけられたのは、物心つく少し前のこと。思えば、いつまでも武芸の上達しない僕は、見限られていたのかもしれない。
知恵方は、物覚えのいいとはいえない僕を蔑んだり貶したりせず、一つ一つ絡んだ糸を丁寧に解くように教えを授けてくれた。知恵方は当時15を数えたばかりで、僕と2つしか変わらなかったが、父上にも叔父上にも感じない存在の大きさを感じていたのを覚えている。
「にいさま、おしごとおわりですか?」
「ああ。入っておいで、雅」
「はいっ! あ、ゆきのぶさま、おじゃまいたしますっ」
講義が終わると、決まって知恵方の妹姫がやってきた。
外を出歩けない知恵方の希望で、いつも障子は開け放してある。
風が室内をかけるよりも、彼女が来るとその場が明るくなった気がした。
知恵方の膝に乗って、知恵方の話すお伽噺を楽しそうに聞く彼女。
いつの間にか、僕は彼女と話すことが楽しみになっていた。
天津平定の大武将の一人、猛将の娘。
年を重ねても、彼女は僕に笑顔で接してくれた。
しかし年を重ねると、彼女は稽古着や男装でいることが多くなった。
「行信様、いらっしゃいませ」
「雅、また武芸の稽古をしているのかい?」
「はい。十将に列せられるには、もっと強くならなくては」
いつでも、彼女が見ている先は、前だけだった。
彼女が“久条 正宗”として十将宣下を受けることを聞いたのは、それから数ヶ月。
「叔父上、雅姫の十将宣下、取り下げてはいただけぬのですか」
行灯の火だけが、ゆらゆらと明かりを灯している。
「無理を言うな。儂とて十将の一人。おいそれと主上に進言できるものではない」
「そん、な……」
行灯に虫が飛び込んだらしく、炎が一瞬燃え上がるのを聞き逃して、闇にうなだれたのは、まだ記憶に新しい。
思えば、叔父上の行動が変わったのは、この頃だったかもしれない。
遠くで、鬨の声が響いている。
きっと、あの姫の声もあの中にあるのだろう。
「雅……」
僕はただ、彼女に笑っててほしかった。
『私は、あの方についていくと決めた。そこが、終の果てであっても』
瞼に浮かぶ、烈将への思いを聞いたときの、顔を赤らめた表情。
今まで見たことのない、幸せそうな笑顔。
僕は、こんなことを、望んでいたわけじゃないのに。
手の甲に爪が食い込んでいる。
痛みは感じるが、そんなことどうでもいい。
僕は、情けない。
武芸を修め、知識を修めても
僕は、叔父上の傀儡でしかない
「力を望むかい? 樫平の若造よ?」
部屋の奥から、黒い声がする。
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詩柳耶琴
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
このページ内における「ラグナロクオンライン」から転載された全てのコンテンツの著作権につきましては、運営元であるガンホー・オンライン・エンターテイメント株式会社と開発元である株式会社Gravity並びに原作者であるリー・ミョンジン氏に帰属します。
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なお、当ページに掲載しているコンテンツの再利用(再転載・配布など)は、禁止しています。
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