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絵とかなんとか色々置いておく場所です。
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友達との与太話。
出演:BSことやん・友達の村正騎士子

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「ねぇ。なんで髪伸ばしてるの?」

「ん? 特に意味はないけど?」

 一瞬だけ悲しそうな顔をして、でもすぐにへらっと笑う。
 こうやって話をするようになってから、何度となく聞いた問い。
 そのたびに、決まって帰ってくる反応。
 本当は、分かってる。
 なんで髪を切らないのか。
 なんで、そんなに悲しそうな顔をするのか。



 そう、あれはモロクが崩壊する、ずっと前。
 あたしは生まれてからずっと一人ぼっちだった。
 時々外を覗くと、ママに怒られた。
 「悪い子達がいるから、外をのぞいちゃだめ」って。

 あたしの家から少し離れた所がスラムの端だと知ったのは、後の話。
 そこにはあたしよりも幼い子もいっぱいいて、あたしと同じくらいの歳の子もいっぱいいた。
 見ているだけで楽しそうで、ママの目を盗んで、よく窓からこっそり覗いていた。

 ある日、パパとママが首都に出かけたのを見計らって、そっと家を出てみた。
 初めて出る家の外は乾いた風が気持ちよくて、太陽がすごくあったかかった。
 上機嫌で散歩してると、いきなり数人に囲まれて。
 服装はシーフみたいだったけれど、目の色が明らかにおかしくて。
 どうやら誕生日だから、とプレゼントされたシルクローブのせいでイイトコのお嬢様だと思われてしまったらしい。
 走って走って、それでも捕まりそうになって。
 その瞬間、影が通り過ぎた気がした。

「大丈夫? 怪我、してない?」

 気がついたら、あたしは金髪のアコライトの女の子に抱きしめられてて。
 あたしを追ってたシーフたちは、黒髪のアサシン姿の男の子と銀髪のシーフ姿の女の子に叩きのめされているところだった。
 きらきらの金髪を三つ編みにしたアコライトの女の子が、ヒールをかけてくれて。
 追っ手を倒したシーフの女の子は、ちょっと誇らしげで。
「いいとこのお嬢がうろつくところじゃないぞ」って発育途上の手でぽむぽむと頭を撫でてくれたアサシン。
 これが、最初だった。
 アコライトの螢とシーフの怜は双子で、アサシンの湖斗夜は二人のお守り、と言っていた。

 この日から、三人はあたしが外に出ると必ず家の近くにいた。
 どうやら護衛の意味で待ち伏せしていたらしい。
 スラムのこと、スラムの歩き方。スラムの子供達のこと。
 三人が話してくれる世界は、今まで知らなかったことだらけで楽しくって。
 あたしは毎日外に出た。外に出れば、三人がいてくれたから。
 三人と一緒に、スラムの子達が遊んでくれたから。
 スラムの子達は冒険者になれる13歳になると同時に何かしらの職に就くから、一人一人個性的な子達ばかりだった。
 土地柄かシーフの子が多かったけれど、アーチャーもいれば剣士もいて、アコライトもいれば商人もマジシャンもいる。
 皆と話していると全然飽きなくて。
 冒険者になってみんなと一緒に世界中を駆け回る。そう決めるまで、時間はかからなかった。

 そうこうしている間に螢はプリースト、怜はローグになって。湖斗夜もアサシンが板についていた。
 螢はプリーストになるとほぼ同時に三つ編みをやめて髪をおろすようになっていた。
 髪をおろした螢はすごくキレイで。同性のあたしでもため息が出るほどだったのを憶えている。
 湖斗夜は元々カッコよかったけど、凄みっていうか、貫禄がついてもっとカッコよくなっていた。そのせいか、暗殺者が目立っちゃ問題だろう、という理由でオペラ仮面をかぶるようになった。
 そして、湖斗夜と螢の薬指には、お揃いのクリスマスリングが光っていて。いつでも一緒にあちこちに飛び回っていた。
 怜は銀色の髪をばっさりと肩で揃えて、ローグの中でも屈指の実力者になっていた。
 三人とも冒険者として慌しそうだったけれど、週に一度は必ず誰かがあたしの家に来てくれて。
 螢が来たときにはノロケを聞いて。
 怜が来たときにはお土産に持ってきてくれたクッキーを一緒にほおばって。
 湖斗夜が来たときには、やっぱり八割はノロケだった気がする。
 あたしは一人じゃない。そう思っていた。

 でも。三年前のあの日。
 モロクの南門の下で、女プリーストの遺体が見つかった。
 キレイな金色の髪の、プリースト。
 流れた血はあらかた砂が吸っていて。
 その顔は、いっそ眠っているようだった。
 それから全てが変わってしまった。
 湖斗夜は自暴自棄になって、アサシンも辞めて。
 怜もしばらく殺気立っていたと思うと、ふらりと旅に出て。
 そして二人とも、あたしの前から姿を消してしまった。
 あたしはまた一人ぼっちになった。
 当時10歳だったあたしは、まだ冒険者にはなれなくて。
 追いかけることも、出来なかった。

 一年前。悪名高かったローグギルドが謎の壊滅、という号外が出た。
 パパは「天罰が下ったんだ」と喜んでいた。
 
「フレス、本気なのか? 何も冒険者になんかならなくても……」

「冗談! もう3年もガマンしたのよっ! あたしは騎士になるのっ」

 パパの反対を押し切って独り首都に降り立ち、剣士になったのはつい半年前。
 お小遣いを貯めてこっそり買い集めた武器や防具は最低限以外はカプラサービスの倉庫に入れさせてもらって、今はアカデミーで修練を積んでいる。
 なんで騎士になるといったのかは、自分でも分からない。
 たまたまパパの部屋から見つけた妖刀・村正とツーハンドソードが理由の一つであるのは確かだけど。
 古の魔王が目覚め、崩壊していくモロク。
 なす術もなく、崩れていく街。逃げ惑う人々。
 あの光景を二度と見ないようにできるだけの強さを、と。
 そう願ったからかもしれない。
 首都の大通りをふらふらと歩いていると、一人の商人が露店を広げるところだった。
 カートの中を一瞬見る限り必要なものはなさそうだ、と判断してスルーするところだったけれど。
 顔を上げた商人をみて、危うく叫ぶところだった。
 髪は昔より伸びているし、アサシンのような鋭さは当然ないんだけど。
 見間違えるはずがない。どう見ても、湖斗夜がそこにいた。
 大慌てで裏路地に逃げ込んで深呼吸。物陰からギルドエンブレムを確認して、何食わぬ顔で彼の所属するギルドに入った。
 いろいろな話を聞いた。
 血の繋がっていない、速度特化騎士の妹がいること。
 ハイプリーストも兼業していて、そちらの方では道を究めるのも近いほどであること。
 ときどき、ふらりと砂漠のほうに旅に出ると通信が途絶えてしまうけれど、数日するとけろりと帰ってくるという変なクセがあること。
 ありえない。これしか頭に浮かばなかった。

「おーマスター。その子 どしたのー?」

 以前からは考えられない朗らかな声がやってくる。
 ゴロゴロとカートを引いてくるのは、まぎれもなく先ほど大通りで見た湖斗夜だった。

「ああ、新入りだよ。フレスティスっていうんだ。仲良くしてやってくれ」

「ん。りょーかい。はじめまして、コトヤだよ」

 にぱっと笑って、手を伸べられる。
 どうやら、かつてのことは何も憶えていないらしい。

「あーマスター。俺 ブラックスミスになるわ。みんなの武器、作ってあげるよ」

「マジかー。そりゃ助かるな。材料は集めてやるから、期待してるぜ」

「おっけーぃ」

 目の前でギルドマスターのモンクと彼が、談笑している。

『もしもし、フレス?』

 あっけにとられているところに、頭の中で聞きなれた声がした。

『久しぶり、怜だよ。憶えてる?』

『憶えてるよ! 今どこにいるの!? 急にいなくなって、あたし すごく心配して…!』

 念話なのに、言葉がつまる。

『うん、ごめん。そうだよね、心配、したよね』

 怜の声が、一瞬螢の声に聞こえた。

『んとね、今速度特化騎士になってるの。おにいちゃんには、もう会った?』

 ものすごく言いづらそうだけど、多分これ以上の言葉はないのだろう。
 昔から怜は、隠し事が苦手なのだ。

『え、おにいちゃんって……』

『フレスの近くにいるはずなんだけど……寝てるのかな?』

 顔をあげると、ギルドマスターと談笑している商人が、に、と笑った。

『……ううん、多分、目の前にいる』

『そっか』

 バラバラだったパズルが、かっちりとはまる。きっとそれは、こんな感じなのだろう。
 相変わらず脳内で響く怜の声を遠くに聞いて、ふらふらと、彼の元へ歩く。

「ねえ」

「ん? なんでしょ?」

「どうして、髪の毛伸ばしてるの?」

「いや、特に意味はないけど?」

 一瞬悲しそうな顔をして。へらり、と笑う。
 昔なら、そんな笑顔はしなかった。

「似合わないか?」

「うん。似合わない」

 悲しそうに、笑う。
 十分分かったよ、理由。

「変な髪形。」

 言葉だけが、とまらずに流れ続けた。

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詩柳耶琴
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場

といいつつ、いろいろ詰め込んであります。

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