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絵とかなんとか色々置いておく場所です。
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初・主殿。

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 烈将と呼ばれて久しくなった頃。
 新たに参内した将は【智将】と呼ばれていると聞いた。
 涼やかなその姿は、まるで静かに流れる滝のようで。
 忍び者とは思えない俺とは、まるで対極だと。
 こう伝え聞いて、興味を覚えないほうがおかしいだろう?

 足音一つ立てず、城外の一画へ近づく。
 ここは武芸方に属する者が鍛錬を積む場であり、他方に属する者はそうそう近づかない。修験場というやつだ。
 遠くにいても、数人の気迫ある声が聞こえる。おそらく数人で組み手をしているのだろう。それにしても、さきほどから妙に悔しそうな声しか聞こえないのはどういうことだろう。
 塀に飛び乗り、中を見ると。
 悔しそうな声しか聞こえないわけだ。
 屈強な将がざっと10名。その悉くが地に這わされ、動きたくとも動けないらしい。
 動けぬ体を無理やりに起こそうとしながら彼らが見る先には、人影。
 艶やかな黒髪を無造作に束ね、竹光を払う。
 こちらのほうが上にいるせいか、表情は見えない。
「覗き見とは質の悪い。降りてまいられよ」
 声が、こちらに向けられた。
「気配、消してたんだけどな……」
「ほう。それならば貴公はまだ新しい草か?」
 笑っている、らしい。
 つ、と相手の顔が上がる。
 細面に描かれる、冷たい笑顔。
 静かに流れる滝を人間の姿にしたらきっとこんな姿なのだろう、と思えた。
「いかがなされた」
「いや……なんでも」
 塀を降りて、近くで呻きながら倒れている将の竹光を拝借する。
「名を聞きたい」
「正宗」
 涼やかな声が短く響いた。
 唇がつりあがるのが、自分でも分かる。
「俺は――」


 今でも覚えている、あの時の感情。
「ぬし、どの?」
 あの涼やかな声は、俺の一番傍にある。
「正宗。」
「……雅とお呼び下さいませ。今だけは」
 今だけは。
 その言葉の後を、決してこれは言ってくれない。
 そっと傍に抱き寄せる。
 いつか、続きを言ってくれる日を待つ。
 その前に、俺からも言えるといい。
 今はこの温もりを、この腕から逃がさないように。
 柔らかな髪に手を滑らせながら、まどろむ温もりを楽しもう。
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ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場

といいつつ、いろいろ詰め込んであります。

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