昔々…

[0回]

昔々　この国が建って間もない頃。

魑魅魍魎が我が物顔で跋扈していた頃のこと。
天津にかの者ありと謳われた、一人の武将。
武将は草を従え、一振りの刃を持っていた。
刃の名は『正宗』。
誰が打ったか、その刃に裂けぬものはなく、またその刃を折るものはなかったという。

かの武将の前に敵はなく。鬼すらもその刃の下　次々に斬り伏せて。
血雨降りしきる戦場を駆ける姿は、烈将の名に相応しく。
絶大なるその力は、鬼神そのものと畏怖された。

驕れる将は国を欲した。
街は火の海、あちらこちらで上がる鬨の声。
女子供は逃げ惑い、護国の将達が向かえども
烈将は正宗の一振りで数多の命を刈り取っていく。

しかしてついに烈将は捕らえられ、郎党もろとも地下深くに封ぜられた。
今尚地下にて眠れぬままに彷徨う、怨霊武士。
姿を変えたかつての従者を引き連れて、天津の闇を歩く者。
手に帯びた正宗の　煌きを見て生きる者なし。
かの者は呪われた将。
気をつけよ、怨霊武士は今もこの世を手にする夢を見る。

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琵琶法師風味に。多分こんな感じで伝承されてっちゃってるんだろーな、とか。