絵とかなんとか色々置いておく場所です。
「なんだこれ?」
目の前に広がるのは、布の塊が形成する山。
例によって世界を調整するための眠りの呪いから醒めた後。
地上で行われた祭りが終わったのと引き換えるように届いたそれらは、どう見ても天津のものではなかった。
「どうやら、大陸の連中のもんらしいな」
布の塊は、ある規則をもって一纏めずつにされており。よくよく見ていけば、普段見るものと色は違うものの、冒険者たちが着ている衣装だと分かった。
「なんでこんなもんがここにあるんだよ」
「先程このような紙が落ちてまいりました。 どうやら天上の手違いのようですな」
金剛は一枚のなめらかな紙をひらひらと指先でもてあそびながら言う。
ふと目を向ければ、部下たちは気になった包みを開けては実際に着て好き勝手に言いあっている。
目の前に広がるのは、布の塊が形成する山。
例によって世界を調整するための眠りの呪いから醒めた後。
地上で行われた祭りが終わったのと引き換えるように届いたそれらは、どう見ても天津のものではなかった。
「どうやら、大陸の連中のもんらしいな」
布の塊は、ある規則をもって一纏めずつにされており。よくよく見ていけば、普段見るものと色は違うものの、冒険者たちが着ている衣装だと分かった。
「なんでこんなもんがここにあるんだよ」
「先程このような紙が落ちてまいりました。 どうやら天上の手違いのようですな」
金剛は一枚のなめらかな紙をひらひらと指先でもてあそびながら言う。
ふと目を向ければ、部下たちは気になった包みを開けては実際に着て好き勝手に言いあっている。
眠りの呪いが、何故だかいつもより早く解ける。いつもならば、こんなにすぐには溶けぬ筈であるし、世界はまだ眠っている気配なのに。
早々に目覚めた主殿達は、何故か社に山と積まれた布の塊を前に興味津々の様子だ。
いつも通り、数秒後には祭りになりそうなその光景を見ている私の視点は、刀からのそれではない。
どうにも違和を感じて、床を見つめてみる。
視界に映るのは、檜張りの床についた、女の足。
主殿の腰には、いつも通り刀が一振り。私の寄り代であるはずのそれが佩かれているのを、離れたところで見ている。
普段なら、ありえないその光景。
違和を感じるはずだ。私は太刀から抜け出ている。
決して。決して抜け出でられないはずなのに。
皆も主殿も、誰も気付いていない。
「おそらく、天上がやらかした手違いの影響でしょう」
後ろから聞こえるのは、何度も聞いた土地神の声。
「まったく、封印の掛け直しに来てみれば……」
「私も、封じられるのですか?」
「貴女が顕現してしまったのは、天上の仕業。
おそらく、数刻すればいつものように刀に引き戻されましょう」
ため息混じりに。護符を手の中でもてあそぶ少年が言葉を紡ぐ。
「せっかくです。衣装を少し見ておいでなさい」
「え?」
「纏う事は許されませんがね。少し触れて眺めるくらい、罰は下りませんよ」
声が聞こえたのとほぼ同時、ふんわりと風が舞って、隣にいたはずの少年の姿が掻き消える。
とりあえず、歩き回っても構わないという許可をいただいた…と判断していいのだろうか。
こっそりと輪の中に混ざって、衣類の山を見定める。
ほとんどの品は白が基調で、そこに青や緑などを合わせられ、とても涼しそうな印象を受ける配色になっている。
敵として相対する冒険者たちの衣装の中には陰陽師殿達が纏う式服に似た衣服があったり、黒を基調にした重厚な鎧一式もある。まるで怨霊殿が纏う鎧のようなその一式は、いかにも鉄壁の印象を受ける。
しかし、まるで足を見せつけんばかりの切り込みが入っていたり、体の一部しか覆わないものの組み合わせであったり、胸と最低限しか隠さないような際どい衣類も数点。大陸の冒険者というのは、どうしてこうも極端に違う服装なのか。
人形の姿になったくの一や、銃器兵と呼ばれる異形になった忍達が思い思いに衣類を纏い、楽しそうに笑っている。
天狗の面をつけて酒瓶を担いでいる金剛も、主殿も、楽しそうに笑っている。
妖に転じようとも、私が隣に居なくとも。主殿は、楽しければ笑うのだ。
「しかし大陸の冒険者達はすごいのう! 褌とサラシで戦うのか!」
「んむ、まったくじゃな!」
騒いでいるのは、言う通り胸元に少々の布を纏っただけで、褌といって過言ではない衣装を纏っている忍者二人を囲んだ一団。
片方には腰の後ろにも垂れ布をかけてあるものの、それは褌に変わりはなく。しかし、胸元にある衣類の造りをみるに、女性用のような気がしないでもないのだが、気のせいだろうか。
「この皮帯は何の用途があるのか」
傍らでは人形達が、穴と金具がついた皮製の帯をしげしげと見上げている。
「あ、これ」
不意に、主殿が一繋がりになった衣類を手にして声を上げる。
見るからに上質な純白の生地で仕立てられたそれは、腰のところに大陸風に結われた飾り帯が付けられ、肩には簡単な防具を備えている。例によって正面に二箇所、足に当たるところが切れ上がっているが、まるでこちらで言う白無垢のような衣装だ。
「あ、御館。今、正宗様のこと考えたでしょう?」
「んなわけあるか。俺があいつに着てほしいのはこっちだっつの」
くの一達の囃しに、切り替えした主殿が持っていたのは、腰に飾り付きの垂れ布があるものの恥部をわずかに隠すのみの一式。組み合わせの中で最も際どいそれ。
「御館。正宗殿がこの場にいたら、間違いなく叩き斬られますぞ……」
金剛がため息混じりにいった言葉は、正論。間違いなく、実体であったなら主殿の首元に刃を宛てているところだった。
「冗談だよ。あんな格好させられるか」
普段の飄々とした口調、よりも、少しだけ本音が混ざった声音が聞こえた気がした。
主殿の方を振り向こうとした刹那。
一瞬のうちに、視界が黒く落ちる。
気がついたら。視界は、見慣れた太刀からのそれになっていた。
『気付いたか、太刀の姫』
怨霊殿の声が、反響するようにして聞こえる。
ああ、やはり。
主殿のお顔は、見られないのか。
『思うところがあるならば』
怨霊殿の声が、相変わらず響く。
『呟くくらいならば、誰にも害にはならぬぞ』
『私を、憐れと思われますか?』
口をつくのは、我ながら可愛げのない言葉。
「怨霊ー!」
遠くで、主殿の声がする。
「ほらほら、この鎧! あんたにぴったりだと思うんだが纏ってみねえか?」
はしゃぐ声。
何度も何度も。かつてならすぐお傍で聞いた、聞き慣れた調子。
『……少し眠ります』
自分の思考が情けなくて。
ただただ。暗い闇の中に意識を落とした。
早々に目覚めた主殿達は、何故か社に山と積まれた布の塊を前に興味津々の様子だ。
いつも通り、数秒後には祭りになりそうなその光景を見ている私の視点は、刀からのそれではない。
どうにも違和を感じて、床を見つめてみる。
視界に映るのは、檜張りの床についた、女の足。
主殿の腰には、いつも通り刀が一振り。私の寄り代であるはずのそれが佩かれているのを、離れたところで見ている。
普段なら、ありえないその光景。
違和を感じるはずだ。私は太刀から抜け出ている。
決して。決して抜け出でられないはずなのに。
皆も主殿も、誰も気付いていない。
「おそらく、天上がやらかした手違いの影響でしょう」
後ろから聞こえるのは、何度も聞いた土地神の声。
「まったく、封印の掛け直しに来てみれば……」
「私も、封じられるのですか?」
「貴女が顕現してしまったのは、天上の仕業。
おそらく、数刻すればいつものように刀に引き戻されましょう」
ため息混じりに。護符を手の中でもてあそぶ少年が言葉を紡ぐ。
「せっかくです。衣装を少し見ておいでなさい」
「え?」
「纏う事は許されませんがね。少し触れて眺めるくらい、罰は下りませんよ」
声が聞こえたのとほぼ同時、ふんわりと風が舞って、隣にいたはずの少年の姿が掻き消える。
とりあえず、歩き回っても構わないという許可をいただいた…と判断していいのだろうか。
こっそりと輪の中に混ざって、衣類の山を見定める。
ほとんどの品は白が基調で、そこに青や緑などを合わせられ、とても涼しそうな印象を受ける配色になっている。
敵として相対する冒険者たちの衣装の中には陰陽師殿達が纏う式服に似た衣服があったり、黒を基調にした重厚な鎧一式もある。まるで怨霊殿が纏う鎧のようなその一式は、いかにも鉄壁の印象を受ける。
しかし、まるで足を見せつけんばかりの切り込みが入っていたり、体の一部しか覆わないものの組み合わせであったり、胸と最低限しか隠さないような際どい衣類も数点。大陸の冒険者というのは、どうしてこうも極端に違う服装なのか。
人形の姿になったくの一や、銃器兵と呼ばれる異形になった忍達が思い思いに衣類を纏い、楽しそうに笑っている。
天狗の面をつけて酒瓶を担いでいる金剛も、主殿も、楽しそうに笑っている。
妖に転じようとも、私が隣に居なくとも。主殿は、楽しければ笑うのだ。
「しかし大陸の冒険者達はすごいのう! 褌とサラシで戦うのか!」
「んむ、まったくじゃな!」
騒いでいるのは、言う通り胸元に少々の布を纏っただけで、褌といって過言ではない衣装を纏っている忍者二人を囲んだ一団。
片方には腰の後ろにも垂れ布をかけてあるものの、それは褌に変わりはなく。しかし、胸元にある衣類の造りをみるに、女性用のような気がしないでもないのだが、気のせいだろうか。
「この皮帯は何の用途があるのか」
傍らでは人形達が、穴と金具がついた皮製の帯をしげしげと見上げている。
「あ、これ」
不意に、主殿が一繋がりになった衣類を手にして声を上げる。
見るからに上質な純白の生地で仕立てられたそれは、腰のところに大陸風に結われた飾り帯が付けられ、肩には簡単な防具を備えている。例によって正面に二箇所、足に当たるところが切れ上がっているが、まるでこちらで言う白無垢のような衣装だ。
「あ、御館。今、正宗様のこと考えたでしょう?」
「んなわけあるか。俺があいつに着てほしいのはこっちだっつの」
くの一達の囃しに、切り替えした主殿が持っていたのは、腰に飾り付きの垂れ布があるものの恥部をわずかに隠すのみの一式。組み合わせの中で最も際どいそれ。
「御館。正宗殿がこの場にいたら、間違いなく叩き斬られますぞ……」
金剛がため息混じりにいった言葉は、正論。間違いなく、実体であったなら主殿の首元に刃を宛てているところだった。
「冗談だよ。あんな格好させられるか」
普段の飄々とした口調、よりも、少しだけ本音が混ざった声音が聞こえた気がした。
主殿の方を振り向こうとした刹那。
一瞬のうちに、視界が黒く落ちる。
気がついたら。視界は、見慣れた太刀からのそれになっていた。
『気付いたか、太刀の姫』
怨霊殿の声が、反響するようにして聞こえる。
ああ、やはり。
主殿のお顔は、見られないのか。
『思うところがあるならば』
怨霊殿の声が、相変わらず響く。
『呟くくらいならば、誰にも害にはならぬぞ』
『私を、憐れと思われますか?』
口をつくのは、我ながら可愛げのない言葉。
「怨霊ー!」
遠くで、主殿の声がする。
「ほらほら、この鎧! あんたにぴったりだと思うんだが纏ってみねえか?」
はしゃぐ声。
何度も何度も。かつてならすぐお傍で聞いた、聞き慣れた調子。
『……少し眠ります』
自分の思考が情けなくて。
ただただ。暗い闇の中に意識を落とした。
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自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
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