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絵とかなんとか色々置いておく場所です。
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燃える街。


こんな光景を、望んだんじゃない。



ただただ、奥歯をかみ締めるしか、できない。

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 今でも、忘れちゃいねえよ。
 師匠の言葉は、何一つ。

「良いか。忍びたるもの、情を持ってはならん
 己の全てを殺し、影に徹し、与えられた任務を遂行する」

「ただ一振りの刃であれ。
 常に磨き上げ、いついかなるときに使われてもよいように」

 まだガキだった俺には、師匠の言葉がすべてだった。
 今俺がいるのは、燃え上がる市井。
 火を射掛けたのは、古狸の手の者だ。

「そんな見え透いた罠にかかりにいくとは。お前は忍びを何たると思っておる」

 いつもの低い声が聞こえた気がする。
 あーもう、分かってるよ。
 これが罠だってくらい。
 でも、どうしても。
 二度と、目の前で大事な人を失いたかねえんだよ。

 女々しいなんて言わないでくれよな。
 あの時から、一瞬だって脳裏から消えないんだよ。
 俺とクウガを谷底に落として、無数の手裏剣を打ち込まれて矢襖になっていくあんたの姿が。
 あの時から。
 俺は誰より強くなることを望んだんだ。

 なあ、師匠。
 大事なものを守るってのも、忍びの矜持だって。
 そう教えてくれたよな。

 炎の街中を駆ける。
 体中に矢が突き立ち、切り傷も十を下らないけれど。
 俺は、守りたいんだ。
 たとえ俺がその為に矢襖にされても。
 俺は、どんなに血まみれになっても。
 その為に、俺は走る。


*****************************************************



 一瞬だって脳裏から消えない。
 あいつと俺を谷底に落として、無数の手裏剣を打ち込まれて矢襖になっていく貴方の姿。
 貴方を、守れなかった弱い自分。

 あの時から、あいつは忍びとしてではなく武将として修練を積んだ。
 それまでは無口で無愛想だったのに、ヘラヘラ笑っておちゃらけるようになった。
 武将となったあいつは、誰よりも先に戦陣を駆け抜けていく。
 自分以外を傷付けないために。
 触れるもの全てを斬り伏せながら戦場を駆けるその姿から【烈将】とあだ名されるまで時間はかからなかった。

 いつだってあいつは、自分のことは後回しで。
 いつだってあいつは、自分のことを人に見せなくて。
 昔から全然かわっちゃいないんだ。

 俺は、影に徹することを選んだ。
 情を殺して、与えられた任務を遂行する。
 それでいいと思った。

 市中から火が上がる。
 女子供が逃げ惑い、あちこちで声が上がる。

 あの馬鹿が……。
 ぎり、と、膝の上の拳が悲鳴を上げる。

「クウガ殿」

「分かっている、手は出さん」

「ほほ、それで良いのですよ」

 狸が気配を消していく。

 俺は、弱いだけなのかもしれない。
 師匠。貴方が、もし生きていたならば。

 あんな狸を、のさばらせたりは、しなかったでしょうか……
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ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場

といいつつ、いろいろ詰め込んであります。

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