絵とかなんとか色々置いておく場所です。
冷えた月の光が心地いい。
草々のしっとりとした湿り気は、肌にちょうどいい。
ゆるやかに風が渡る、平穏な初夏の夜。
プロンテラから少々離れた森を歩く。
「そろそろ、出てきてもいいんじゃないか?」
何もないはずの枝間に、もっていた小石を投げつける。
枝に当たるはずの石は闇に消え、物音の一つも立たない。
代わりに聞こえるのは、木々のささやきともとれる、忍び笑い。
「影が狩るのはギルドの名を汚すもの、だったな」
答えの代わりというように、冷たい輝きが一瞬目の端に映った。
バックステップ、をキャンセルして、前に半歩。
ジュルの片方のみを抜いて背に這わせると、金属がぶつかる音がする。
「いいねえ、さすがだよ」
心底楽しんでいるとわかる無邪気な声が響き、風が強くなった。
上下左右。左と見せかけて下。下と思えば上。
俺のジュルと影が持つ得物が闇夜に交錯し、甲高い金属の衝突音が絶え間なく続く。
「黒い風が走ると、血の雨が降る」
無邪気な声が紡ぐ詩が、脳の中に響く。
「触れようものなら、その腕は宙に舞う」
「次の刹那にはさかさまの天地、二度と光を見ることはない」
無邪気に歌う冷たい声(ノイズ)が、鳴り止まない。
「肉塊浮かぶ血海の、血の香に酔う、黒き風魔」
牙と爪が肉薄する。
「ねえ? 湖斗夜?」
「何のことだろうな」
言葉の交差は一瞬。
二つの旋風が、草原を舞う。
「なんで裏切り者じゃなくて、アサシンダガーなんだ?」
「これから死ぬ相手に教える理由はないよ」
底冷えするような、楽しそうな声が返ってくる。
「ねえ、湖斗夜。アサシンギルドの中で完璧に気配を殺せるのは、僕と君だけだと思うよ。
風のように、相手に居場所を悟らせないほどのスピードを誇るのもね」
楽しそうな声は、その調子を一切変えずに跳ねるように念話を紡ぐ。
刹那、相手の気配が一気に膨れて空間を支配する。
「だからこそ、僕が君に引導を渡す役を命じられた」
耳元で囁かれているような、脳内で響いているような。
絶対零度の声音を聴いたと思った瞬間、脚に熱が走る。
「今日このときを以って、君はアサシンギルドの人間じゃあない。
これはギルドマスターの決定だよ」
風に乗って、声が聞こえる。
「ちゃんと家に届けてあげる。安心していいよ」
これが、やつの声を聞いた最後だった。
目を覚ましたのは、家のベッドの上。
一番に目に飛び込んできたのは、ベッドサイドの椅子で眠たそうに聖書をめくる碧だった。
聞けば、皆で交代で俺が目を覚まさないか待っていたらしい。
しかし。医者の診断を聞いて、俺は意識を手放すところだった。
『脚の腱を完全に断たれている。日常生活に問題はないが、もう前のように仕事は出来ない』
いろんな思いが一度に胸を襲う。ただ、はっきり思ったのは。
このまま目がさめなければよかった。ということ。
「まぁ、しばらくゆっくりしたら。この二年くらいまともに寝てもなかったでしょ」
「別に動けないわけじゃないんだしー。商人の登記は残ってるんなら、本格的に商売したらいいじゃないー」
「アルケミストにしてもブラックスミスにしても、製造専門だったら上半身が満足に動けば何とでもなるだろ。気落とすなって」
好き勝手なことを言うノイズが煩い。
夜に一人で横になっていると。
気がくるいそうになる。
「傷の具合どうー?」
不意に。脳裏に無邪気な声が聞こえる。
「良好だ。完璧で、鮮やかな切り口だと医者が褒めていたよ」
「そりゃよかった」
脳裏の声は、心底嬉しそうだ。
「……ギルドマスターの決定、そう言ってたな」
「うん、言ったねえ」
「何でだ?」
「自分で考えたらー?」
くすくすと。風がそよぐような笑い声が、耳元で聞こえる。
「マスターはね。湖斗夜が大事だから、僕に引導を渡させたんだよ」
ふと声の方を向いても誰もいない。
「なんだよ、それ……」
子供の頃から、速さが自慢だった。
走るのも、身軽さも。速さこそが俺の武器だった。
その最大の武器が、一夜にして奪われた。
窓辺に飾られているのは、ひまわりと呼ばれる花。
黄色い花弁を誇るその大きな花は、星空の下、何故か優しく笑っているように見えた。
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草々のしっとりとした湿り気は、肌にちょうどいい。
ゆるやかに風が渡る、平穏な初夏の夜。
プロンテラから少々離れた森を歩く。
「そろそろ、出てきてもいいんじゃないか?」
何もないはずの枝間に、もっていた小石を投げつける。
枝に当たるはずの石は闇に消え、物音の一つも立たない。
代わりに聞こえるのは、木々のささやきともとれる、忍び笑い。
「影が狩るのはギルドの名を汚すもの、だったな」
答えの代わりというように、冷たい輝きが一瞬目の端に映った。
バックステップ、をキャンセルして、前に半歩。
ジュルの片方のみを抜いて背に這わせると、金属がぶつかる音がする。
「いいねえ、さすがだよ」
心底楽しんでいるとわかる無邪気な声が響き、風が強くなった。
上下左右。左と見せかけて下。下と思えば上。
俺のジュルと影が持つ得物が闇夜に交錯し、甲高い金属の衝突音が絶え間なく続く。
「黒い風が走ると、血の雨が降る」
無邪気な声が紡ぐ詩が、脳の中に響く。
「触れようものなら、その腕は宙に舞う」
「次の刹那にはさかさまの天地、二度と光を見ることはない」
無邪気に歌う冷たい声(ノイズ)が、鳴り止まない。
「肉塊浮かぶ血海の、血の香に酔う、黒き風魔」
牙と爪が肉薄する。
「ねえ? 湖斗夜?」
「何のことだろうな」
言葉の交差は一瞬。
二つの旋風が、草原を舞う。
「なんで裏切り者じゃなくて、アサシンダガーなんだ?」
「これから死ぬ相手に教える理由はないよ」
底冷えするような、楽しそうな声が返ってくる。
「ねえ、湖斗夜。アサシンギルドの中で完璧に気配を殺せるのは、僕と君だけだと思うよ。
風のように、相手に居場所を悟らせないほどのスピードを誇るのもね」
楽しそうな声は、その調子を一切変えずに跳ねるように念話を紡ぐ。
刹那、相手の気配が一気に膨れて空間を支配する。
「だからこそ、僕が君に引導を渡す役を命じられた」
耳元で囁かれているような、脳内で響いているような。
絶対零度の声音を聴いたと思った瞬間、脚に熱が走る。
「今日このときを以って、君はアサシンギルドの人間じゃあない。
これはギルドマスターの決定だよ」
風に乗って、声が聞こえる。
「ちゃんと家に届けてあげる。安心していいよ」
これが、やつの声を聞いた最後だった。
目を覚ましたのは、家のベッドの上。
一番に目に飛び込んできたのは、ベッドサイドの椅子で眠たそうに聖書をめくる碧だった。
聞けば、皆で交代で俺が目を覚まさないか待っていたらしい。
しかし。医者の診断を聞いて、俺は意識を手放すところだった。
『脚の腱を完全に断たれている。日常生活に問題はないが、もう前のように仕事は出来ない』
いろんな思いが一度に胸を襲う。ただ、はっきり思ったのは。
このまま目がさめなければよかった。ということ。
「まぁ、しばらくゆっくりしたら。この二年くらいまともに寝てもなかったでしょ」
「別に動けないわけじゃないんだしー。商人の登記は残ってるんなら、本格的に商売したらいいじゃないー」
「アルケミストにしてもブラックスミスにしても、製造専門だったら上半身が満足に動けば何とでもなるだろ。気落とすなって」
好き勝手なことを言うノイズが煩い。
夜に一人で横になっていると。
気がくるいそうになる。
「傷の具合どうー?」
不意に。脳裏に無邪気な声が聞こえる。
「良好だ。完璧で、鮮やかな切り口だと医者が褒めていたよ」
「そりゃよかった」
脳裏の声は、心底嬉しそうだ。
「……ギルドマスターの決定、そう言ってたな」
「うん、言ったねえ」
「何でだ?」
「自分で考えたらー?」
くすくすと。風がそよぐような笑い声が、耳元で聞こえる。
「マスターはね。湖斗夜が大事だから、僕に引導を渡させたんだよ」
ふと声の方を向いても誰もいない。
「なんだよ、それ……」
子供の頃から、速さが自慢だった。
走るのも、身軽さも。速さこそが俺の武器だった。
その最大の武器が、一夜にして奪われた。
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黄色い花弁を誇るその大きな花は、星空の下、何故か優しく笑っているように見えた。
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HN:
詩柳耶琴
性別:
非公開
自己紹介:
ラグナロクオンラインのアマツ萌え&自キャラによる人形遊びな実験的短編置き場
といいつつ、いろいろ詰め込んであります。
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